ADHD児の動きをつくる/体育教具子どものドラマ
※ この文章は、『教育トークライン』(東京教育技術研究所)に以前掲載されたものである。
イエロークラブ 体育教具子どものドラマ
ADHD児の動きをつくる
大谷 和明
札幌市立ひばりが丘小学校
1 もてあまし気味のO君
入学以来、教室にじっとしていられない・友達に暴力をふるう・突然人にかみつく・テストで分からないとすぐに答案用紙をグシャグシャにしてしまう・・など、先生達にももてあまされ気味だったO君というADHDの子がいた。
体育の時間、思った通りに体を動かすことができずにイライラしがちであった。リズミカルに動く必要がある「縄跳び」は当然嫌いだった。
2 担任となってのなわとび指導
そのO君を私が担任することになった。四年生の時のことである。
知的な面では、それほどの遅れを感じることがなかったので、運動機能を鍛えることで、いろいろな動きを可能とするように方針を立てた。
縄跳び運動では、私には必勝の教具がある。
┌───────────────────────────────────────┐
│スーパー跳び縄+リズム太鼓 │
└───────────────────────────────────────┘
である。スーパー跳び縄は法則化中央事務局が開発以来、愛用させてもらっている。毎年春には、学校中で注文を取り付けて送ってもらっている。つまり、学校中でかなりの子どもたちが愛用してきている。
これまでのO君の担任と私との違いは「リズム太鼓」の有る無しということが一番大きい点だったと思う。ジャンプはできる。縄の跳び越しはできる。しかし、その場でジャンプして回旋縄を跳ぶことがうまくできない。リズミカルに跳び続けることは彼にとっては未知の世界の話しだ。縄跳び指導にも細分化された指導が必要である。まずは、片手回し。太鼓のリズムに合わせて縄を回す。(低次の子どもには、逆回しができないこともあるのだ)次に、縄回しをしながら歩く。縄が床にきた時点で片足が上がっているのがタイミングをとるコツだ。この間、縄の回旋と太鼓のリズムをあわせ続けている。
いよいよ回旋跳躍だ。もちろん一回旋二跳躍、それもゆっくりだ。幼稚園・保育所レベルだ。幼稚園ですでに特殊学級にいたO君には、リズム遊びが不足していたことと思う。四年生でもそこから導入するべきなのだ。「トントン」と跳躍リズムを口で取りながら試技をしてみせる。跳躍のタイミングが太鼓に変わる。
いよいよO君の挑戦。
何度かの失敗の後、成功することができた。短縄では、最初のたった一回の成功が黄金の一瞬である。「できる」「できない」の差は天と地ほどの開きがある。たった一回の成功をほめる。
その後、一回旋一跳躍から技跳びへと挑戦が続くことになる。
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