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2007年1月 2日 (火)

私の本棚070102 ギャグエイジの肥料

『芸能入門考~芸に生きる』(小沢昭一 土方鉄;明石書店 1,300円ちょっと古い '81年ものである)

職業柄「ギャングエイジ」という言葉にはなじみがある。小学校3~4年生の子供たちはしばしば徒党を組んで行動を共にするというところから「ギャングエイジ」と言われている。(もはやこれは死語であると私は感じている)
今回のタイトルは誤植というわけではない。「ギャグエイジ」である。つまり、素人ながら言動そのものがギャグであるということをいいたいわけだ。
TVの取材を受けて、画面に登場する素人さんはものすごく多い。とりわけ若者は、お笑い芸人(コメディアンというよりももっと低俗な雰囲気をもつ名称だと、この頃感じている)との差を感じられない人が多い。一般の庶民がお笑い芸能人に近づいたものやら、お笑い芸人がアホな若者に近づき堕ちていったものやら区別がつかない状態だ。

これは完全にメディアの、とりわけTVの影響が大きい。しかも、売れればそれだけ影響力が大きい。まねするものが出てくるのである。本書には、次のくだりがある。

-----------いま人気絶頂といえる、東京の若手漫才コンビ、ツービートである。彼らが、漫才で、しゃべったものが、『ツービートのわッ!毒ガスだ』(KKベストセラーズ)という新書版にまとめられ、大変よく売れているそうだ。黒いユーモアといって、もてはやされているが、果たしてどうだろう。「人はねた、あの快感がたまらない」「寝る前にちゃんと絞めよう親の首」「暗い道 バアさんすてるいいチャンス」「ひどいブス たかった銀バエ即死する」「貧乏人 フランス料理で腹こわし」「もうやめよう 人食い・割礼・頭はぎ」
ツービートは、実にテンポの早いしゃべくり漫才だが、こういう悪口が、機関銃のように、飛び出してくるのだ。注意するまでもなく、ツービートがつくり出す笑いは、老人や、ブスや、貧乏人を悪しざまにいうことによっている。(中略)同書には、「たかが漫才師のいったことに、腹をたてて投書してくるバカ」ということばを、警句のつもりでか、掲載しているが、ユーモアとは、もっと次元の高い笑いをさすものではなかったのか。---------

これは第三章 差別と大衆文化 の中で、土方が書いた文章である。その後のビートたけしの活躍や才能を見る限りでは、彼の計算された笑いがヒットにつながったことが分かると思う。つまり、たけしは「こういうことを言えば、大衆受けするだろう」という結論をすでに手中にしていたはずである。メディアをつかって成功を収めた一例でもあるわけだ。問題なので、土方がいうような低俗な笑いを求めていた、そのようなことでしか笑えなくなってしまっていた国民の低俗性にこそあるだろう。そういう親たちに育てられてきているのが、現代の子供たち・若者たちである。(バカ者たちといっていい)

テレビのバラエティを見れば瞭然である。笑いをつくるネタがほとんど、自虐的・諧謔的なものばかりである。そういうことでしか笑えなくなっているメンタリティに問題があるのだと、私は感じている。一億総ギャクエイジ化になりつつある・・・そんな気がしているのである。これじゃあ、生産性も堕ちてくるわけだと痛感している昨今である。

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