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2007年2月10日 (土)

私の本棚070210TRONが消えた一因?!

『孫正義 起業のカリスマ』(大下英治著;講談社+α文庫 933円+税)
~孫正義 起業の若き獅子~1999年刊行、を改題、加筆・再編集されたもの

函館へ法要に向かう列車内でひさしぶりに一気読みしたもの。佐野眞一よりはリアリティに欠ける作りなのだが、それなりにテンポがよく、若き日の孫氏の動きがよく伝わってきた、読み応えのある一冊。私は孫正義氏を尊敬する者の一人なのだが、本書の中では異議を述べたいところがある。TRONに関わる考え方の違いである。
ご存じのとおり、国産OSとして今やユビキタスコンピュータを支える技術の一つとして脚光を浴びているものだが、私が最初に知ったころからすでに30年近くも月日が経ってしまっている。なぜゆえにここまでずれこんでしまったのかというと、アメリカの政治的圧力による。そもそもBASICからDOSへと移行していた時代ながら、その当時は、WINDOWS開発と発表に向けてかなりOSのテクノロジーが進んでいた頃のことである。マイクロソフトとしては、MSXとMS-DOSによって大衆化路線を確立したい時期でもあったろう。そこに立ち向かっていたのが、東大坂村教授(当時は確か助教授だったな)率いるTRONプロジェクトであった。それがものの見事に粉砕されてしまって、その後はご存じMS-DOS(Ver.6)あたりからマルチウインドウ・マルチタスクのWINDOWSへと世界中が飲み込まれていったというわけだ。要するに、日本はまた黒船にしてやられたり!といった状況なわけだ。

(引用開始)-------西(註大谷;西和彦さんのこと)や坂村には技術者的資質が濃い。一方、孫は、あくまでも経営者的な立場から発言していた。憮然とする二人を横目に、持論を吐き続けた。矛先をTRONに突きつけた。「坂村さん、あなたが提唱しているTRONの大義名分、車のハンドルやブレーキと同じように、パソコンの操作性やソフトの互換性を統一するのはわかります。そして、アメリカの技術ばかりを受け入れていることに忸怩だる思いがあって、日本が開発した技術を広めたいという気持ちもわかる。それは一つの正義です。ただし、狭い正義です。日本だけで通用して世界に通用しないのであれば、まったくの鎖国にすぎないではないですか。いずれ、世界の流れのなかのスタンダードで自然に統一されます。たとえば、マイクロソフトの製品がそのような形で受け入れられはじめているではありませんか。」坂村は目を吊り上げて食ってかかった。「いや、マイクロソフトは商業主義で、それぞれのハードメーカーのご都合に合わせてつくっている。そんなことは起こりっこない!」孫は笑みを浮かべた。「ぼくはあくまでも性善説なんです。人間の本性は善であると考えています。あなたのような性悪説ではない。世界のユーザーが統一性を求めているのだから、時代はその方向に流れますよ。」孫は、関係者に会うたびにTRONの危険性を説いてまわった。-------(引用終了)

嗚呼、そんなことをしていたのかい?!という感じ。(だじゃれじゃないよ(^_^;)世界一の車屋になろうとしているトヨタのマイクロチップ、世界に名だたる携帯電話技術、そのいずれもが細々と生きてきたTRONを搭載していることをどれだけの国民が知っているんだろうか。そして、バージョンアップのたびにハードごと買い換えを迫られるようなOSの乗り換え犠牲者が累々としている現状・・・。TRONを搭載が世界に広がっていたら、もしかしたら、LINUXの開発ということも起きなかったのかもしれない。
鎖国どころか自主的に開国して、世界に日の丸OSを送り込めていたかもしれなかったのだ。
ここのくだりはなんともはや、がっかりさせられたところであった。

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