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2016年5月 4日 (水)

知識に基づく「先読み」現象について

子どもたちに音読させると時々「書いて有るとおりに読まない」という現象に遭遇することがある。誤読による先読み現象である。

先読み現象とは、書かれている文や文章の流れ(文脈)から『おそらくそのように書いてあるだろう。』という思い込みによってテキストを拾って読むべきことを、自らの中に予想されるテキストを発声してしまうことである。

内容を間違って読み取ってしまう「誤読」とは異なり、音読での「誤読」には知識の自己再生が邪魔をしてしまうようである。人間の賢さが読みを助けることがあり、会話や対話での音声言語を介した情報交流場面ではよくあることである。

例えば、野口芳宏氏が「教室音読のすすめ」と題した講演(野口芳宏著作集 第一集別巻に所収されている岐阜講演会でのもの)で、氏は来場者に向けて若干声量をおさえつつ口形も不確かな状態で次のように話してみたところ、来場者はものの見事に賢さで間違った音声言語を正しい内容としてのテキストへ変換してしまったのである。

野口氏は犬の絵を提示しながら、次のように言っている。「これあ、えぬのいです。」来場者は「これ<は><犬>の<絵>です。」と聞き取っているのである。

野口氏は続けて次のように言う。「日本語を学んでいる外国人は、言ったとおりに正確に聞き取るのだが、日本語を母語とする日本人には言わんとするところを勝手に補正して聞き取ってしまう。」(正確ではないが、ほぼこのようなことをおっしゃっている)

学習科学におけるテキスト補正について、三宅なほみ氏はサイトで「THE CAT」(図を参照)を用いて同様のことを述べている。

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少しばかりの英語の知識をもつ私たちには、上の図をみれば「たちどころにTHE CAT」と読めてしまう。

正確には図2の表記不備の文字は読めないとするべきものだが、図1の表記では前後の流れから図2の文字を「H」と「A」に置き換えて読むのである。

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H」と「A」は異なる文字で誤読することが難しいのだが、私たちの頭の中では適正な補正をして文脈構成をしてしまうようである。それは経験や知識に基づくものであり、人間の賢さの影響による。

卑近な話ながら、私は「ひつまぶし」を知らなかった時に、初めて見たこの言葉(写真といっしょに書かれていたらこうはならなかっただろうが)を「ひまつぶし」と黙読したのである。「ひ」「つ」「ま」「ぶ」「し」の5文字をひとかたまりに見た時に、持っている知識の中から瞬時に知識としてもっている「暇潰し」という語に当てはめてしまったということである。もちろん誤読である。「ひつまぶし」の正体を知ってからは(つまり「ひつまぶし」という食べ物の知識を得てからは)二度と誤読することはなくなった。(^_^;)

子どもたちの音読で誤読が起きるのは文末が多い。また、文中で読みがよどんだりつっかっかったりするのは、その子にとって知識としてない言葉であることが多い。

知識は学習の上で必要なことではあるのだが、知識による「しばり」という影響も伴うことがあるのだということを考えさせられる事例だろう。(終わり)

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